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パソコンが苦手なかた必見!! 令和6年1月からスタートする電子帳簿保存法を乗り切ろう

電子帳簿保存法

こんにちは。税理士のアイです。

さて、10月からインボイス制度がスタートしますね。
インボイスの対応はお済でしょうか?
インボイス制度の対応も大変ですが、令和6年1月1日からは、電子帳簿保存法が改正されます。

どこが変わるかというと、電子で送受信した取引は電子で保存しないといけなくなります。
「私は電子取引なんて・・・」というかたも、メールに請求書が添付されていたり、ネットショッピングを利用することはありませんか?これも立派な電子取引です。

電子帳簿保存法の要件はかなりめんどうくさくて、パソコンが苦手な人やシステムを導入できないかたは「大丈夫かな」と不安になるかもしれません。
ですが、パソコンが苦手な小規模経営者でも電子帳簿保存法に対応することは可能です。

今回のブログでは、電子帳簿保存法の内容と、対応がどうしても難しい方が必ずやらないといけないことを書いていきます。

令和6年がスタートしたら、まずは自分がやれることから始めて、どんどん改善してみてください。

電子帳簿保存法はどこが変わるの?

 

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは、税務で保存が必要な「帳簿」や「領収書・請求書等の国税関係書類」を紙ではなく、電子で保存することです。

この、電子帳簿保存法は3つに分けられます。

  1.  電子帳簿等保存・・・会計ソフトなどで作成した仕訳帳や総勘定元帳を電子データのまま保存
  2.  スキャナ保存・・・取引先から受領した紙の領収書・請求書等を電子化したものを保存
  3.  電子取引データ保存・・・電子でやり取りした領収書・請求書等を電子のまま保存

①の電子帳簿等保存と②のスキャナ保存は、任意となっておりますので、今回の記事では触れません。

令和6年1月から変わるのは③の電子取引データ保存です。

もともと、電子取引のデータ保存は令和4年1月1日から義務化となっていましたが
データ保存が難しい事業者はプリントアウトして保存しておけば大丈夫ですよ
という2年間の「宥恕措置」が設けられました。

令和6年1月1日からは「宥恕措置」が廃止されるので
電子取引はデータ保存が義務化され、電子取引は電子で保存しないといけなくなります。

要件など細かいことは後述しますが、最低限、電子データで保存する必要があります。

電子取引とは?

では、電子取引というのはどのようなものでしょうか?

法律には
「電子取引」とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいう。
と規定されています。

 

ちょっと、よく分かりませんね。
具体的には

  • PDFの請求書が電子メールで送られてきた
  • ネットショッピングで購入した領収書をホームページ上からダウンロードした
  • ネットバンキングを利用している
  • クレジットカードやキャッシュレス決済の利用明細をダウンロードした
  • ペーパレスFAXで請求書を受領した

などがありますが、ご自身の事業でも使っているような、身近なものも多いのではないでしょうか?

電子取引データの保存要件

では、電子取引データを電子で保存するには、どうすればよいでしょうか?

電子取引データの保存要件は2つあります。

  1.  真実性の要件
  2.  可視性の要件

 

真実性の要件

①の「真実性の要件」というのは、保存されたデータが「改ざんされていない正しいデータです。」と証明することです。

真実性の確保するためには、タイムスタンプやシステムを使うなどありますが
お金を使わずすぐにできる方法は「事務処理規定」を作って、その規程に沿って運用することです。

事務処理規定は国税庁のHPにひな形があがっているので、作るのは難しくないと思います。

 リンクを張っておくので参考にしてください

 国税庁HPの 参考資料(各種規程等のサンプル)

「電子取引に関するもの」の「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」から法人・個人事業者のどちらかご自身に合ったものをお選びください。

可視性の要件

次に②の「可視性の要件」というのは、保存されたデータを検索・表示できるということです。

表示させるにはパソコンのディスプレイやプリンタがあればいいので、特に問題はないかと思います。

問題は、検索機能を確保することです。新しいシステムを入れずに検索機能を確保するのはかなりめんどうくさいです。

理由は検索要件が厳しいからです(涙)。

検索要件は下記の3つをすべて満たす必要があります。

  1.  取引年月日、取引金額、取引先の3つの項目で検索できること
  2.  日付又は金額の範囲指定により検索できること
  3.  二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること

 

例えば、電子取引のファイルを保存するときに

230911_110,000円_㈱山田商事.PDF

と保存した場合
PC上のフォルダから、一つのファイル名で検索をすることはできますが
「日付と金額」「金額と取引先」など二つ以上を組み合わせて検索することはできません。

二つ以上を組み合わせて、又は範囲指定をして検索をする場合は、索引簿を作成する方法もあります。索引簿のサンプルは

 国税庁HPの 参考資料(各種規程等のサンプル)

「電子取引に関するもの」の(索引簿の作成例)に載っています。

索引簿について簡単に説明すると、エクセルで日付・金額・取引先などを別に入力して管理する方法です。

確かに索引簿を作成すれば、複雑な検索をすることができますが、索引簿の作成がめんどうくさすぎです。そして絶対に間違う・・・

 

システムの導入も考える必要があるかもしれませんが、まだ電子帳簿保存法が本格的にスタートしていない現在では使い勝手や、料金が気になるところです。

では、小規模事業者など、検索要件が確保できそうにない事業者はどうすればよいかというと、次の「猶予措置」を見ていきましょう。

猶予措置

令和5年12月31日に「宥恕措置」が廃止され令和6年1月1日からは「猶予措置」が設けられます。
なんか、言葉がややこしいですね・・・

「猶予措置」は、電子取引をデータ保存しておけば、先ほどの難しい検索機能がいらなくなります。

「猶予措置」が使える事業者は、検索要件の対応ができなかったことについて、相当の理由があり、下記の①②のどちらかに該当するものです。

①基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下

または

②電子取引データをプリントアウトした書面を、日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている

つまり、システム等の整備が間に合わない事業者は、検索要件を満たさなくてもとりあえず電子データを保存し、電子データをプリントアウトしておきましょう。

なお、「猶予措置」を使う場合は、税務調査等の際に、電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じる必要があるので、注意してください。

まとめ

令和6年1月1日から変わる、電子帳簿保存法の取扱いはどうでしたか?

何から手を付けたらいいか分からないという人は、まずは下記の3つをやってみてください。

  1. 事務処理規定を作成する
  2. 電子データをとりあえず保存する
  3. 基準期間の売上高が5,000万円を超える事業者は保存した電子データをプリントアウトする

電子帳簿保存法が変わるまで、あと数ヶ月です。

電子データの保存は日常的な業務です。習慣化が鍵となりますので
パソコンが苦手な小規模事業者のかたも、できることからやってみてください。

新しいシステムもどんどん出てくるので、テストをしながら少しずついい方法を見つけてみてください。