社長が“数字を見る目”を持とう
「経理は担当者に任せているから」
「会計処理は税理士さんに見てもらってるし」
そう思っている会社も多いと思います。
でも、経理担当者がいても
最終的に“数字の意味”を理解して、経営判断するのは社長自身です。
そして、経理担当者がいない会社でも
少しの時間を取るだけで「今の会社の状態」を知ることは十分できます。
月次チェックは、難しい分析ではありません。
ほんの1時間、30分でもいいので、自分の目で数字を見ることで
「何となく不安」を「具体的な行動」に変えることができます。
① 貸借対照表は「今の会社の姿」を写す鏡
貸借対照表(B/S)は“会社の健康診断書”のようなもの。
今、会社にどれだけ資産があり、どんな負債があるかが一目で分かります。
まずは、次の項目だけ、チェックしてみましょう。
- 現金:出納帳と現金は一致しているか。出納帳がマイナスになっていないか。
- 預金:通帳残高と帳簿が一致しているか。入金・出金に抜けや重複はないか。
- 売掛金:売上の入金が止まっていないか。長く未回収になっている取引先はないか。
- 買掛金・未払金:支払漏れや誤った処理がないか。二重に残っていないか。
- 借入金:返済分が正しく減っているか。利息処理は抜けていないか。
- 仮払金・立替金:放置されていないか。いつの支出か分かるようになっているか。
数字を全部理解しなくても大丈夫。
「なんでこの金額が、こんなに増えたんだろう?」と感じることが
チェックの第一歩になります。
現金や預金のズレ、放置された立替金など、小さな違和感が大きなミスにつながります。
「合ってるかな?」を毎月1回、自分の目で確認してみましょう。
② 損益計算書は「会社の流れ」をつかむ地図
損益計算書(P/L)は、会社の1か月の“動き”を映した地図のようなもの。
どこでお金を使い、どこで利益を生んでいるかをつかむことで
経営のバランスが見えてきます。
前回はさっと確認するために「原価」と「販管費」を見ましたが
今回はもう少し踏み込んで、「変動費」と「固定費」に分けて見てみましょう。
前回の記事はこちら↓
小さな会社こそ数字に強くなるべき理由
💡変動費と固定費のちがい
経費には、大きく分けて「変動費」と「固定費」の2種類があります。
-
変動費
売上の増減に合わせて変わる費用です。
たとえば、仕入・外注費・販売手数料・運送費など。
売上が増えれば一緒に増え、売上が減れば減る。
つまり「売上に連動する費用」です。 -
固定費
売上に関係なく、毎月ほぼ一定でかかる費用。
人件費・家賃・通信費・保険料などが代表的です。
“会社を支えるために毎月かかるお金”と考えると分かりやすいです。
ちなみに、人件費や交際費などは
性質によって変動費にも固定費にも分類される場合があります。
たとえば、歩合制の給与や、販売インセンティブは「変動費」
月給制や管理部門の給与は「固定費」に近い考え方です。
🌿どちらを見直すか
利益を増やすために大切なのは
「どちらの費用を見直すか」を意識することです。
-
変動費は、仕入単価の見直しや外注費のバランス調整がポイント。
-
固定費は、使っていないサブスクの解約や契約内容の整理など、地道な見直しが効果的です。
売上が下がっても固定費が重く残ると、利益は一気に減ってしまいます。
逆に、固定費を少し軽くするだけで、利益の底力がぐっと上がります。
数字を見て「売上が減ったのに変動費が変わっていない」「固定費が少し増えているな」と気づければ十分です。
その“気づき”こそが、経営の感覚を育ててくれます。
変動費=動くお金、固定費=守るお金。
この違いを意識して見ると、利益の仕組みが、ぐっと分かりやすくなります。
③ 経理担当がいても「社長チェック」は欠かせない
経理担当がいても、社長が数字を見なければ「経営判断のスピード」が落ちてしまいます
経理担当者は記録の専門家ですが、“意味づけ”をするのは経営者の役割です。
たとえばこんな質問をしてみましょう👇
- 「この経費は先月より増えてるけど、何が変わったの?」
- 「この売掛金、いつ回収予定?」
- 「利益は出てるのに、現金が増えてないのはなぜ?」
こうした質問を月に1度でも交わすことで、数字が“生きた情報”になります。
また、社長が見てくれていると分かるだけで、経理担当者の意識も高まり、ミスも減ります。
💡そしてもう一つ、大切なこと
社長が数字を見る習慣を持つと、不正やミスも起こりづらくなります。
見張るためではなく、「見ている仕組み」があることで
お互いが安心して仕事ができる環境ができるのです。
実際に、毎月のチェックで小さな不正や横領の兆しを見つけたこともあります。
でも、誰かを責めるためではなく、会社を守るための“仕組みとしての確認”が大切です。
社長が数字を見るということは、経理担当者を信頼しないことではありません。
むしろ、“一緒に会社を守るチームになる”ための大切な習慣です。
数字を見ることは、「経営のため」でもあり、「安心のため」。
見守るようにチェックすることで、会社全体に良い緊張感と信頼の空気が生まれます。
④ 毎月1回、30分だけ数字タイム
月に1回、1時間だけ、30分だけ、月次チェックの時間をつくってみましょう。
難しい分析はいりません。
次の5つをチェックするだけで、会社の状態が見えてきます。
💡月次チェックの流れ
1️⃣ 会計ソフトの月次試算表を開く
または、税理士さんから送ってもらった資料を用意します。
2️⃣ 現金・通帳の残高を確認
帳簿と通帳が合っているか、ざっくり照らしてみましょう。
3️⃣ 売掛金・買掛金・未払金の残高をチェック
「入金されていない売掛金」や「支払漏れ」がないかを確認。
4️⃣ ③の中で金額が大きい項目を確認
特に金額の大きい取引先・取引内容に変化がないか見ておきます。
5️⃣ 損益計算書(月次推移・前年対比)をざっくり見る
売上や経費の動きで、変動の大きいところがないかをチェック。
たったこれだけでも、資金の流れ・売上の変化・支払漏れなどを早期に発見できます。
慣れてくると、15分程度でも「会社の今」が見えるようになります。
完璧にやらなくてOK。
“数字と向き合う30分”が、会社を守る最高の時間になります。
■まとめ
月に一度、たった30分だけでも数字と向き合う時間をつくると
会社の“今”が見えてきます。
経理担当がいても、いなくても
社長自身が数字を見ることは、会社を守る大切な習慣です。
見るだけで
・お金の流れの違和感に気づける
・ミスや支払漏れを早く発見できる
・不正の芽を防ぐことができる
最初は「なんとなく」で大丈夫。
“数字を見る目”は、回数を重ねるたびに育っていきます。
数字は、会社を守る味方。
まずは見てあげるだけで、あなたにたくさんのサインをくれるはずです。
- 数字を見るのは「分析」ではなく「会社を守るための習慣」
- 30分でできる“月次チェック”でも十分効果あり
- 経理担当がいても、いなくても、社長が自分の目で見ることが大切